メンバー紹介
伊藤 成史さん(CTO、PhD)
関水
伊藤さんは、学生のときから一貫してバイオセンサーの研究・開発を続けてこられました。NEC中央研究所での非侵襲グルコースモニタリング研究、タニタでの尿糖計の製品化、そしてProvigateでの涙グルコースセンサーや週次グリコアルブミンセンサーの開発…。この長いキャリアの中で、一貫して「非侵襲グルコースモニタリング」に挑んでこられたわけです。なぜ、そこまでグルコースセンサーの開発に情熱を持ち続けられるのでしょうか。
伊藤
私のキャリアのスタートは、まさに日本が半導体や家電で世界をリードしていた1980年代後半でした。半導体が「産業のコメ」と言われていた時代ですね。日本の中央研究所がまだまだ強くてとても鍛えられました。当時はバイオテクノロジーが急速に発展し始め、DNA組換え技術や酵素利用の研究が注目されていた時期です。半導体技術とバイオを組み合わせたら面白いことができるのではないか、という好奇心からバイオセンサーの道に進みました。測れないものをどうやって測るかを考えるのは、とても創造的でワクワクします。非侵襲グルコースセンサーの実現は夢であり目標ですね。

日本の技術者人材
強かった日本の中央研究所
関水
NEC中央研究所の時代をもう少し教えて下さい。バイオセンサーに関する伊藤さんの知識・人脈は「迫力」があるレベルと思うのですが、どのようにしてスーパーエンジニア・伊藤が生まれたんでしょうか(笑)
伊藤
当時の日本はまさにバブル期で、研究費も潤沢でした。研究所全体に活気があり、「あと3ヶ月で●億円で開発しろ!」と若い頃から大きな裁量を任され、チャレンジングなテーマに没頭することができました。設備投資も十分になされていましたし、中央研究所を中心に様々な関連協力企業とのエコシステムも形成されており、皆で連携して切磋琢磨しました。本当に忙しい日々ではありましたが、その中で得た経験や人脈は現在の仕事の基盤になっています。とにかく猛烈に働いたので、現在の日本のコンプライアンス環境ではそのまま再現するのは難しいかもしれませんが(笑)
関水
関水としては、創業期に伊藤さんを採用できていなかったらと思うと、本当に冷や汗が出ます。伊藤さんの人脈からベテラン人材を何人も採用していますし、協力企業との連携もできました。今のProvigateに至るまでの過程は、若者だけでは到底成し得なかったと思います。日本の50代後半から60代のいぶし銀エンジニアはまさに一騎当千です。伊藤さんが第一線で活躍されている今のうちに、ぜひProvigateの若手・中堅エンジニアにスキルと経験を伝え、ビシバシと鍛えてもらいたいと思います。
伊藤
はい、Provigateの若手・中堅はアカデミア出身の人が多いからこそ、その強みと産業の現場経験を掛け合わせて、どこに行っても通用するエンジニアに育っていってくれたらと思います。
GAセンサーの開発
グルコースセンサーからGAセンサーへ
関水
Provigateに入社された2017年、涙グルコースセンサーをわずか数か月で作り上げてしまったのには本当にびっくりしました。その後は週次グリコアルブミン(GA)センサーの開発に大きく舵を切ったわけですが、関水から「伊藤さん、涙のグルコースセンサーも良いのですが、グリコアルブミンのセンサーもできませんかね?」と言われたとき、正直どう思いました?
伊藤
簡単に言うなよ、バイオセンサーを舐めてるのか、と思いました(笑)。しかし、考えれば考えるほどGAは魅力的です。涙グルコースセンサーは技術的には非常に良い精度で測定できますが、得られるのはあくまでも瞬間的な血糖値に限られます。しかも生理学的に涙と血液のグルコースの相関には限界があります。そのため、インスリンユーザーにおける投与量調整や低血糖回避目的には危なっかしくてとても使えません。
一方で、GAならば週に1回測定するだけで、ざっくり1週間の平均血糖がわかりますから、非インスリンユーザーの2型糖尿病のある方にはとても有用だと言えます。世界に5億人いると言われている糖尿病のある人の大半は日常的に血糖を測定していません。週に1回の検査であれば、低頻度なので低侵襲と言えます。しかもコストもグッと抑えることができる。
更に興奮したのは、唾液による非侵襲測定です。血糖や涙糖のような濃度測定と異なり、糖化比率測定なので、理論上は血液だろうが涙だろうが唾液だろうが同じ値が得られるはずです。実際に臨床試験を行い、極めてきれいな相関が得られたときには、大きな手応えを感じて、その価値を確信しました。
現在の開発課題
関水
現在の開発では、酵素改変も重要なテーマになっていますね。
伊藤
その通りです。特にセンサーに用いる酵素の特異性向上と耐熱化は、性能を規定する重要な要素です。従来、変異導入は経験と運への依存度が高い側面がありましたが、現在では配列設計や構造解析の進歩により、より効率的かつ合理的な改変が可能になっています。Provigateにはバイオ分野において高い専門性を有するエンジニアが在籍しており、チームとして着実に成果を上げています。すでに有望な酵素がいくつも得られています。さらに免疫学的アプローチの導入も進めており、これが実用化されれば血糖モニタリングの分野に大きな変革をもたらすことが期待されます。
関水
特許が絡むのでこの辺にしておきましょう(笑) 少なくとも今の開発の先に見据えるのは「世界初の完全非侵襲血糖モニタリング」の夢です。これはもはや夢ではなく「開発課題」になっていると思います。
どのような仲間と働きたいか
関水
伊藤さんは、採用の観点で、今どんな仲間を求めていますか。
伊藤
具体的には、センサーの小型化・高集積化を加速できる機械・電気系エンジニアを求めています。ProvigateはすでにPoC(概念実証)をクリアしており、臨床研究においても有望な成果が得られています。ここからの量産開発フェーズでは、予期せぬサイエンティフィックリスクは低い一方で、完成度を徹底的に追求するエンジニアリングは気合と根性の世界とも言えます(笑) また、直接の開発領域ではありませんが、事業化を支える技術営業やマーケティングの人材も重要だと考えています。生物・化学・物理・医学といった複数領域を横断する開発課題なので、新しいことに果敢に挑戦し、困難を前向きに楽しめる元気な人を歓迎します。
関水
まさに新規事業の「エンジニアリング」と「事業化の加速」が同時に求められる稀有なフェーズですね。伊藤さんの経験を間近で学べるのは、若いエンジニアにとっても大きな財産になるはずです。
伊藤
私自身もまだ新しい技術や手法に挑戦し続けています。一緒に世界に通用するセンサーをつくり、医療の現場に革新をもたらしましょう。
伊藤 成史
5万人規模の大手企業から、わずか6人のベンチャー企業に転職するとは、当初は想像していませんでした。しかし、Provigateはあっという間に社員数が30人を超え、国から、基礎研究から量産技術開発に至る一連の開発に対して総額20億円の助成を受けるまでに成長しました。今や、ベンチャー企業が世界を目指して革新的な製品開発に挑戦できる時代だと、日々実感しています。
かつて日本が強みとしていた半導体製造技術やエレクトロニクスに、現代のバイオ技術を融合させることで、新しいバイオセンサーやAI医療機器の開発に挑んでいます。さらに、糖尿病のある人の心の支えとなるような、次世代のヘルスケアシステムの実現を目指しています。